MAO的小屋 ~相原茂の隠れ部屋~
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MAO'S Profile
雑誌、新聞、書籍などに寄稿したエッセイ集。
中国で映画を観る

岸 弘子
 私は映画が好き、というより、映画館で映画を見るのが大好きです。こちらへ来て「映画が好きだ」というと、ダウンロードしたのがあるから、うちのテレビで見ればいい・・・と言われます。平生はなかなか映画館へ行く時間がないので、仕事が終わって帰宅し、風呂に入った後、10時半ごろから大家さんの息子さんと一緒に夜更かしをして映画鑑賞をしています。

春節の5日間の休みに、どうしても映画館へ行きたいというと、大家さんがネットでチケットを予約してくれました。当日のチケットだと40元〜90元かかりますが、ネットでペアチケットを予約すると2人で37元と、信じられない値段になるのです。

当日のチケットが40元〜90元と、かなり値段に開きがあるのに気付かれたでしょうか。日本では映画のチケットは大人が1800円(レディースデー、オールナイトなどで割引がある場合を除いて)と作品や上映場所にかかわらず一律なのが普通です。中国では(蘇州だけではないと思いますが)まず、上映場所によって値段が違います。郊外の辺鄙なところだと少し割安ですが、市街地の高級デパートの中にあるような劇場だと高めになります。また、作品によっても値段が違うのには驚きです。

日本でもそうですが、お正月の映画館は、家庭で過ごすのに飽きた人たちでいっぱいです。外は寒いし、ほとんどの店は閉まっているし・・・となると足が向く先は同じ、ということでしょう。「わあ、電車のチケット売り場みたいだ」と大家さんの息子さんがポツリ。ネットで予約した場合は、まず予約の確認をし、そこで発行してもらった仮の券を持って再度チケットと引き換えなければなりません(つまり、2回、長蛇の列に並ぶことになります)。2人いる利点を生かし、彼が予約確認の列に並び、私がチケット引き替えの列に並ぶのがベスト、これはどこへ行っても“行列”に出くわす間に身に付けた処世術の一つと言えるでしょう。しかし、これだけ人でごった返していても、予約確認の窓口にも、チ ケット引き替えの窓口にも1人しかスタッフがいません。館内にはやることもなさげにウロウロしているスタッフもいるのだから、2,3人を窓口スタッフに回してもよさそうなものですが。

なんとか開演時間に間に合って入場。上映から2週間たっていた作品だったので、空席が目立ちます。日本の映画上映前には「おしゃべり禁止」「携帯はマナーモードに」「前の席を蹴らない」などの注意が流れますが、こちらでは上映中のおしゃべり、携帯はあまり気にしないようで、日本のようにシーンと静まり返った中で見ることは不可能です。

その日、3,4歳の子連れのお母さんたちも数組いたのですが、上映開始から1時間もすると映画に飽きた子供たちが通路で遊びはじめました。もちろん、お母さんたちは注意する気配すら見せず、ひたすら映画に見入っています。「おかあさん、まだ?」今度は遊びに飽きたらしく、座っている人の前を堂々と通って中央席にいる母親のところへ戻ってきます。そうして自分たちの前を行ったり来たりする子供やその母親を注意する人もいないのです。当然のように子供のために道をあけ、映画鑑賞を続ける人にも驚かずにはいられませんでした。

思えば、娘たちが小さい頃、大好きな映画へ行きたくても“周りの人に迷惑をかけては”と我慢することが多かったのですが、こんな環境だったら、子供連れでも周りを気にしないで映画を見ることができたかもしれません。“子供だから仕方がない”という、おおらかな中国の映画館の環境を羨ましくさえ感じました。

「中国の映画館はあまり環境が良くない」と日本人スタッフに聞いていたのですが、その日、大家さんの息子さんとスナックを片手に「この俳優は・・・」「こういう場合、日本人は・・・」とおしゃべりしながら映画を楽しみ、こういう楽しみ方もあるのかな、と思いました。


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