わが青春 語学に目覚めた頃
相原 茂 昔のことでよく覚えていないのだが,ともかく私は中国人の女性とデートをしていた。
論文を書くために,何かある文法の問題について質問をしていたのだろう。相手はうら若き学生である。彼女に対する淡い恋心のようなものもあったにちがいない。 その日,質問もあらかた済んで,食事も終わり,外へ出た。時計は9時近くを指している。
さあ夜はこれからだ。どこへ行こう。バーのカウンターで一杯やるのもいいし,腹ごなしに公園を散歩するのもいい。ともかくお楽しみはこれからだ。周りの空気さえ甘い。
とその時,彼女はなんと「私帰る」と言ったのである。 驚いた私は「どうして帰るのさ?」と問いつめた。もちろんすべて中国語でのやりとりである。
你怎么回去?Ni zenme huíqu?
すると,彼女はいともあっさりと
坐地铁回去。 Zuò dìtie huíqu.
と言うや,すたすたと地下鉄への階段を下りていった。 残された私はただ呆然と立ちすくんでいた。
“怎么” zenmeが直接動作動詞につくときは,その表す意味はhow to〜つまり「どうやって」である。私の質問は「どうやって帰るの?」という意味にしかならなかったのだ。
「どうしてこんなに早く帰ってしまうのか?」と言うのなら
你怎么这么早就回去?Ni zenme zhème zäo jiù huíqu?
とすべきであった。
私は彼女が階段を降りきり,視野から消えてしまってもしばらくその場を動けなかった。そして固く決心した。
恋をうまくやるためにはまず文法をきちんとやらないとダメだ。
『北京ドリーム ドラマで学ぶ中国語』(相原茂著,駿河台出版社,p434,コラム「下課后」より)
注:ピンインがうまく出ないので声調記号をつけてないところがあります。
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