中国語の爆笑「いいまつがい」
いい間違いをすることがある。それを集めた本もある。その名も『言いまつがい』(監修糸井重里,東京糸井重里事務所)という。書名からして変わっている。以下の4例は,ここからの抜粋である。
○会社の専務がプリンターの前で「トイレの紙がないぞ〜」。それを言うなら「トレイ」だ。 ○会社の先輩がことあるごとに「まことしなやかに」と言います。 ○あるお母さん,「ゴールデン洋画劇場」のことを「『ヨールデンごうが劇場』は何が出るかね〜」と言った。 ○ガソリンスタンドにて,わがダンナ,「現金満タンね」。
私もベネッセがTECCをやっていた頃のこと,あそこのキャラクター「しまじろう」を「とらじろう」と言いまつがえた。ベネッセの方はクスリともせず「よくみなさま間違えられます」と言っていた。 「言いまちがい」,中国語では“口误”という。「聞き間違い」は“耳误”という。この伝でゆけば“眼误”は「見間違い」だ。「書き間違え」は,それでは“手误”かというと,これは“笔误”と言う。 口,耳,眼と身体部位なのに,“笔”だけは特別だ。 さて,その「いい間違い」だが,これを集めた本はさすがにまだ中国にはないようだが,ウェブ上では“暴笑口误”などとして,結構楽しまれているようなのだ。 中国語は対をなす表現が多い。対だから,似たような,あるいは対等な語が登場する。 そこで,どっちが先でどっちが後だか混乱するのだろう。ついついいい間違えをする。
不听话就拖裤子打屁股。 (言うことを聞かないと,ズボンを下ろしてお尻をぶつよ)
というべきところ,対をなしている二つの名詞をとりかえてしまう。
不听话就拖屁股打裤子。 (言うことを聞かないとお尻を下ろしてズボンをぶつよ)
あるいは,お酒に酔ってトイレが近い。よたよた歩きながら愚痴る。
尿喝多了,酒就特别多。 (おしっこを飲み過ぎて,酒が近い)
もちろんこれは“尿”と“酒”をとりちがえてしまったのだ。次も同じような趣向のもの。
收老头的破烂儿怎么还不来啊?? (おじいさん拾いのくず,どうしてまだ来ないんだ)
言い間違いの最たるものは,皆の視線を一身に浴びる司会が犯すそれだろう。 よくあるのはプログラムの紹介の時。「次は“笛子独奏”(笛の独奏)」と言うべきところ“ 肚子笛奏 ”(お腹の笛の演奏?)と言ってしまった人がいる。 特に結婚式の司会は目立つ。プロの司会者は,結婚式とお葬式,両方を担当する。これは結婚式のとき,花嫁花婿がいよいよ“步上殿堂”(式場に入場)というところを誤って“步上灵堂”とやったからたまらない。“灵堂”とは「祭壇を設け葬儀を執り行う部屋」だ。この司会,結婚式をめちゃくちゃにしたとして賠償金をとられたという話だ。 年配者が若者に己が経験の豊かさを誇って「わしが渡った橋は,お前の歩いた道よりも多い」とか「私が舐めた塩は,お前の食べた飯よりも多い」という中国の諺がある。これが左右対称,似た言い方なので,混乱する。
我走的路比你吃的盐都多。 (わしの歩いた道はお前が食べた塩よりも多い)
なんのことかさっぱりわからない。 次は実際によくあるやりとりだ。日本でもありそうだ。
売り手:一块五一斤。 (1斤,1.5元だよ) 私:太贵了,五块钱三斤吧。(高いなあ,3斤で5元にしてよ) 売り手:不行不行。 (ダメ,ダメ)
同級生同士が議論している。片方が劣勢になって,思わずバンと机をたたいて立ちあがっていった。
你胡说,我又不是不傻! (でたらめ言うな,僕だってバカじゃないわけじゃなし)
“不”が一つ余計だった。 どうでしたか,どうも日本語ほど面白くない。これは私がやはり日本人であるため,中国語の方の面白さがピンと来ないためか。 日本語の『言いまつがい』を読むとゲラゲラ笑ってしまうが,中国語のほうはそれほどでもない。 試みにと思って,中国人に“暴笑口误”集を見せたら,きちんと笑う。やはりネイティブだ。
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