MAO的小屋 ~相原茂の隠れ部屋~
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雑誌、新聞、書籍などに寄稿したエッセイ集。
精神病院ジョーク

『笑う中国人』(文春新書616)という中国ジョークの本を出したら,知人からいろいろな反響が寄せられた。中で多いのは「本の中で紹介されているジョークの,こんなバリエーションを私は聞いたことがある」という報告だ。
ふつうジョークには作者がない。誰かが言い出し,それが少しづつ改良を加えられ,登場人物を取り替えたり,時代に合わせたりして人から人へと語り伝えられて行く。
とくに政治ジョークではそういうものが多い。中国だと,ちょっと活字にして本に載せるのはためらわれるが,庶民の間ではいろいろなバリエーションのジョークがひそかに(?),あるいはおおっぴらに楽しまれているようだ。
私が本で紹介したものの一つに「精神病院」ものがある。これは,台湾の陳水扁総統をネタにしたものだ。

【精神病院視察】
ある日,陳水扁総統がある精神病院を視察に出かけた。入院中の全患者が廊下にでて総統を出迎え,歓呼の声をあげた。「陳水扁万歳!陳水扁万歳!」
ただ一人だけ,顔に表情がなく,総統に対しても無視したままの患者がいた。陳水扁はそれに気づくと院長にたずねた。「あの患者はどうしてわしを歓迎しないのかね?」
院長は答えた。「彼は今日,精神が正常なのです。」

これは一つのパターンで,政治家は誰でも候補にされる危険がある。
中国へ旅行に出かけたら,このジョークの李鵬バリエーションを聞いたことがありますと教えてくれた人がいた。
旅行では中国のガイドさんがサービスでこういうジョークを話すことがある。ガイドさんはもちろん日本語で日本人に話す。短期滞在の旅行者だし,ほとんどが日本語しか話せない人々だからまずは安全だ。そんな計算も働き,気を許して話すのだろう。

【精神病院視察】
李鵬がある精神病院を視察に行った。
患者たちを前に熱弁をふるって挨拶をしたところ、普通は話が終わると事前に言い含められていた通り皆が拍手をするのに、その日は拍手もなく、しばらく全員がじーっと李鵬を見つめるばかり。
やがてなかの一人が周りのものに言った。
「よっ、新入りが来たぜ」

次の二つは政治ものではないが,普段は威張り散らしている新聞記者がやりこめられているのが面白い。中国の報道機関の記者は大きな権力を持っている。マスコミで取り上げればときには事件になるし,時には宣伝になるからだ。取り上げてもらいたい人も,取り上げてもらいたくない人も,もてなしに気を遣う。

【テスト】
ある新聞記者が精神病院の院長にたずねた。
「どういう方法で,患者がすでに治癒したかどうかを確かめるのですか」
院長が答えた。
「こういうテストをしています。一つの桶に水を満たし,そのわきにスプーンとお椀をおき,彼らにできるだけ早く桶の水を外へ出させるのです」
「それはもちろんお椀を使ったほうが早いですよね」
記者がそう言うと,院長は彼をチラと見て,静かに言った。
「正常な人は,栓を抜くんですが……」

【正常と異常のあいだ】
医師:「実のところ,ある人が精神に異常をきたしているかどうかを調べるのは簡単です」
記者:「どうやるんですか?」
医師:「1+1はいくらか?と聞けばいいんですよ」
記者:「なるほど,まともな人なら2と答えますよね」
医師:「いいえ。馬鹿にするな,と怒ります」

こういうジョークを読むと,気の弱い私など心配になる。
「俺はシャバにいていいんだろうか」


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