MAO的小屋 ~相原茂の隠れ部屋~
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MAO'S Profile
雑誌、新聞、書籍などに寄稿したエッセイ集。
冬の味

岸弘子
ハルピン市内は、最高気温−11度、最低気温−15度で、雪と氷に閉ざされています。5分も歩くと、指先や鼻、耳が痛くなり、口も自由がきかなくなり、ろれつも回らなくなります。室内に入ったとたんに、じわじわと凍った体が溶けていく感触を味わいながら、きっと冷凍みかんが室温に出されたときは、このような気持ちで溶けていくんだなあ・・・と勝手に想像しています。

気温が氷点下になると、街にサンザシ売りが現れます。自転車の前の籠にあふれんばかりのサンザシの串刺しを積んで、露天で販売しています。かなり前になりますが、『覇王別姫』の映画の中で、小さな子どもが「サンザシを腹いっぱい食べられたら死んでもいい」と、映画の中でおいしそうにサンザシをほお張る様子を見 て、中国へ行ったら、私も一度食べてみたいなあ・・・・とまだ見ぬサンザシの味を想像し、心に思い描いていました。

私がハルピンについたのが9月上旬。サンザシ、サンザシ・・・と思いながらも、街中で目にすることがありませんでした。日本からハルピンに来て2年になる友人に尋ねたところ、「気温が氷点下にならないとだめだよ」と言われ、寒いのは嫌いだけれど、サンザシ食べたさに気温が下がるのを心待ちにしていたのです。
昨日、大学での講義を終えての帰り道、学生達がおいしそうにサンザシを食べている姿を見つけました。きっと近くにサンザシ売りがいるに違いない!!と足早で歩くこと数分。大学構内にサンザシ売りを発見しました。1本だけ買うのは気が引けるので、とりあえず友人の分も含め、2本を買い求めました。かじかんだ手で1 元札2枚を渡すと、しっかりとサンザシを抱え、家路を急ぎました(滑らないように気をつけながら)。

いつも、健康のために9時以降は、食事をしないように心がけていますが、今日だけは特別。熱い中国茶を入れて、友人とサンザシにかぶりつきました。ん?硬い!!私が想像していたのは、外はカリカリ、中はしっとり・・・だったのですが。「凍ってるね」と友人が一言。なるほど、氷点下の露店で販売しているのですか ら、当たり前のことでした。

何十本も買い求めて、冷凍庫で保存しておく人もいるほど、こちらの冬の味として定着しているようです。外側の飴の甘さと、サンザシの酸味が程よく溶け合って、日本のりんご飴より、ずっとおいしく感じました。ビタミンも豊富で、冬の風邪防止の役目もあるようです。『医食同源』、やはり旬のものを食べるのは、それなりの意味があるのだと納得しました。

今日、近くの市場で凍っていないサンザシを買いましたが、凍っている方がシャーベットのようでおいしく(ラズベリーシャーベットの味に似ています)、今、窓辺に移して、凍るのを待っているところです。3時のお茶が楽しみです!


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