親族の団結力
岸弘子 平和な事務所に戦慄が走ったのは、ある一本の電話が鳴ったことに始まります。 いつも出社してくるはずのスタッフが来ないので、また遅刻だろうとみんなでうわさをしていたときでした。事務所の電話が鳴ったので「ほら、きっと言い訳の電話だ」とひとりのスタッフが電話を取りました。ところが、見る見るうちに彼女の顔色が青ざめ、「え?いったいどうしたの?何で?」とうろたえ始めました。
電話を切って、動揺を隠せない彼女を落ち着かせて話を聞きました。彼は、昨夜、日本人スタッフをタクシーで自宅に送り届けた後、歩いて自宅に戻る途中で3人の暴漢に襲われて大怪我をおったとのこと。左頭部から耳にかけての重症で、耳はもぎ取られかけていたと言います。 暮れも押し迫り、特に今年は金融危機に端を発する深刻な不景気の中、盗難事件が多発しているようです。そういえば、少し前に、知人が朝起きたところ、家の中のパソコンがごっそり盗まれていたという話も聞いたばかりでした。
うちの学校では最終の授業が午後8時までなので、事務所でもそれに合わせて残業をしていましたが、その日以来、急ぎの仕事が無ければ、定時の5時半には帰宅するようにしました。
重傷を負ったスタッフが送り迎えしていた日本人スタッフには、その日以来、出退社の際、数人の中国人が着きそうようになりました。 彼らは何者か?実は、その日本人スタッフの奥さんは中国人なのですが、現在日本に滞在中です。暴漢事件の後、心配になった彼女が、ハルピンの兄弟たちに「彼の面倒をしっかり見るように!」と電話一本入れたとたん、親族一同が団結し、交代で送迎を行うようになったということです。 彼らは車を運転しないので、交通手段はもちろんタクシーです。そのタクシー代は、親族みんなで100元ずつ出し合って、「もし、彼に何かあったら一大事!!」くらいの気合を入れて日々の送り迎えを行っているそうです。守られている彼いわく、アメリカの大統領にでもなった気持ちだとか。
私の親族は、盆と正月にしか集まらない親族でしたが、それも本家であった私の両親が死んでからは、盆・正月にも集まらない、年賀状のみのお付き合いになってしまいました。そのため、このような親族の団結は信じられない思いで、(いやだなあ)とか、(何でこんなことをしなきゃいけないんだろう)とか考えることは無いのかしら、と反対に勘繰ってしまいます。
日本人である私も例外ではなく、友人のおばさんから「一人暮らしは危険だから泊まりにおいで」、「車で送迎するよ」と、暖かいお言葉をいただきました。しかしながら、私は日本人の中でもパーソナルスペースが広いほうで、特にプライベートスペースに誰かがいると窮屈に思ってしまうほうなので、お気持ちだけ頂いて、丁重にお断りしました。風呂上がりに裸でうろうろ・・・もできなくなりそうですから(笑)。
もうすぐ春節です。親族揃って春節を祝うために、1月中旬ごろには民族の大移動が始まる事でしょう。 (2008/12/19)
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