小学生レベルの日本語って?
岸弘子 久しぶりに東京に戻りました。ちょうど大学生の長女が期末の課題提出に追われていたので、中国語の課題の手伝いをすることになりました。中国の幼児向け絵本の翻訳(中国語から英語)だったので、楽勝!と思って手伝い始めたのですが、これがなかなか手ごわいのです。ウサギが大根を掘って友達のサルにあげて、それが巡り巡って自分に戻ってくるといういたって簡単な内容なのですが、平生使うことのない単語ばかりで、久しぶりに辞書を片手に苦戦しました。 そういえば、日本の会社に就職した教え子から「お前の日本語力は小学生1年生並みだ」と言われてショックだったという話を聞いたことがあります。何でも、入社した日に日本の小学生向けの国語のテストをして、合格点が取れなかったというのです。 今後のことを考えて、その会社の方からどのような問題を出題したのかを教えていただきました。メールに添付されて届いた問題を見ると、小学校低学年の子供たち向けの簡単な国語の問題でした。しかしながら、問題に出てくる単語は、外国人が日本語を学ぶテキストには出てこないようなマニアックなものばかり。『笠地蔵』の物語の「おじぞうさま」「わらぞうり」「米俵」など、小学生の時の国語の教科書を思い出す懐かしい内容ではありますが、日常 会話ではここ何十年も口にしたこともない単語ばかりが並びます。 私は、落ち込む教え子に、外国語としての日本語と、日本人が習う国語とは、根本的に違うのだと説明した後、こう言いました。「日本人は、オギャアと生まれてから小学校に入るまで6年間、家族や周りの大人から日本語を学んできている。小学校1年並みの実力ということは、日本語学習歴6年だと評価されたと思えばいい・・・」と。 私の娘は高校2年生の時に、交換留学生としてアメリカに1年間留学した経験があります。その時に一番悔しかったのは、自分は日本の高校2年生としての知識や実力を持っているにもかかわらず、英語ができないために知能まで低く評価されてしまうことだったといいます。先生も、まるで小学生に対するような態度で、とてもショックだったといいます。私たち日本語教師も、教えている対象について、きちんとした認識を持つ必要があります。 「教室活動で、動物ゲームをやったけど、生徒が全然参加してくれない」と教師仲間から相談されたことがありますが、彼女の生徒たちは、東京の商社で働く欧米人たち・・・。いくら日本語が話せないとはいえ、幼稚園の児童に行うような内容が素直に受け入れられるはずもありません。 外国語を学ぶ時、子供が言葉を覚えるステップで覚えるべきだと、「うさぎちゃん」「かえるさん」「昔々あるところに・・・・」と幼児教材から始める教授法があります。確かに、私も子供でも分かる簡単な中国語の単語が分からず、買い物や日常の簡単なやり取りで困ったことがあります。母親が子供に日々の生活の中で何げなく話しかける家庭での言語教育がいかに大切かを思い知らされる一方で、外国語教育を考えた場合、果たして、そこから始める必要があるのかというと、私は少し疑問に思います。 夕方から取り組んだ娘の課題も、午前1時を回ってやっと完成。恐るべし、中国の絵本!!でした。(2009年1月24日)
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