MAO的小屋 ~相原茂の隠れ部屋~
Home Profile Essay Diary Column Gallery Books

MAO'S Profile
雑誌、新聞、書籍などに寄稿したエッセイ集。
社員は会社の顔ですか?

岸 弘子
春節の休みに入る前、スタッフ2名に突然辞表を突きつけられ、かなり落ち込みました。日本に一時帰国している間に、散らかり放題になった我が家を片付ける傍ら、いろいろな書店を回って経営や部下の教育方法についての本を読みあさりました。そして、春節明け、その中で、気に入った本を数冊、スーツケースに詰め込み、「よし!今度こそはスタッフを立派に育ててみせるぞ……」と勇んでハルピンに戻って来た次第です。

新たに面接をして1名のスタッフを採用し、研修計画を立てていた折も折、日本からのお客様が留学生募集のためにハルピンにいらっしゃることになりました。その方は、競争の激しい日本語学校経営で成功を収め、中国でも事務所を構えているということもあり、ぜひともノウハウを伺ってみたいと思っていたところだったのです。

夕食の火鍋を囲んでの日中ビジネス談義。「立派なスタッフを育てたい」「会社の顔として恥ずかしくないスタッフにしたい」という私の熱い思いは、彼の一笑にふされてしまいました。
「もし、うちのスタッフが、道端で痰を吐くような行為をしたら、ビジネスマナーを教えている学校として立つ瀬が無い。社員は会社という看板を背負っているのだから」というのが私の言い分。

しかしながら、中国では「社員が会社の顔」である必要はないとのことでした。なぜなら、中国ではビジネスも個人対個人の信用関係の上に成り立つものだから。例えば、AさんがBさんという人を信用していれば、Bさんが勤めている会社と取引をします。もし、Bさんが他の会社に移ったら、AさんはBさんが新しく転職した先の会社と取引をすることになります。
ああ、なるほど・・・私は今さらのように気づいた自分を恥じました。そんなことは、ずっと前から理解していたはずなのに。

もし、私が仮に立派なスタッフを育て上げることに成功したとしても、そのスタッフは、自信ができたその日に、私のノウハウや顧客のすべて持って自立してしまうか、他の会社に移ってしまうと指摘されました。もともと「会社のために働く」という観念がありませんから。
スタッフは、コントロールして使うもの。育ててはいけない・・・。では、誰を信用して仕事を託せばいいのか?となると、やはり「親族」しかありません。友人の「中国式の親族経営を日本式の組織経営に変えたい!」という願いを受けてハルピンにやってきましたが、やはり落ち着く先は「親族」の二文字になってしまいました。

元の鞘に納まった感は無きにしも非ずですが、できれば収める鞘の形を少しばかり私風に変えてみたい……と思っているところです。
(2009年2月24日)


他のエッセイを読む