MAO的小屋 ~相原茂の隠れ部屋~
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MAO'S Profile
雑誌、新聞、書籍などに寄稿したエッセイ集。
となりの外国人

岸 弘子
臨時帰国のつもりだったため、しばらく仕事もしないでぶらぶらしていたある日、以前登録していた派遣会社から「区役所で短期のお仕事がある」と連絡が入りました。じっとうちにいるのも飽きた頃なので、快諾し、早速翌日から今話題の「定額給付金」の受付け窓口に座ることになりました。

口座番号を記入して、印鑑を押して出すだけの簡単な手続きだと思っていました。しかしながら、人間は自分が体験したことがない、身を置いたことがない世界は想像もできないということがよくわかりました。緑色で印刷された申請書の文字が読めないという方、両手に麻痺があってペンが持てない方、目の病で視力が弱って字が書けないとおっしゃって受付に来られる方々に接して「書く」ことが困難な生活を送っている人たちもいらっしゃるのだということを知りました。

もちろん、外国籍の方のために英語と中国語の説明書がついていますが、「捺印」や「代理人申請」「世帯主」のような日本社会独特の言葉は、母国語に訳されていても、そういう習慣そのものがない国の方にとっては、理解しにくいようです。特に「世帯」という意識は日本独特のものなのか、「家族・Familyとどう違うのか」とよく質問されます。結果、「よく分からないから」と書類一式を持参し、窓口で相談される外国籍の方たちが1日に何名もいらっしゃいます。

私は中国語が話せるからということで、主に中国籍の方を担当していますが、どの方も手続きが終わると私に深々とお辞儀をして「本当にありがとう」「本当に助かった・・・」とこちらが恐縮してしまうくらいに感謝を述べられます。今までに「中華料理店を経営してるから食べに来て」と頂いた名刺が2枚。今度ご馳走したいから、携帯の番号を教えてとか、メールアドレスを教えてと数えきれない方にいわれました。

マイノリティーという立場になったときの心細さは、私もハルピンで体験をしています。日常の買い物などの簡単な会話なら何とかなっても、役所の手続きや、さまざまな登録のための書類などは、とにかく分かりにくい!!どうしようかと途方に暮れていた書類を10分足らずで片付けてしまう私が神様に見えるわけも理解できます。

私がまだ20代のころ「隣に住む人、子供の友人、レジの後ろに並ぶ人が外国人である・・・そんな日が必ず来る」と言われていました。現在、コンビニに行けば中国の留学生がレジを打ち、娘の友達がオーストラリア人で、仕事のパートナーが台湾人、そんな時代がまさにやってきました。今回の「定額給付金」の説明書にしても然り。日本人のために日本人が考えた書類であってはいけない時代が来たと言えるかもしれません。

さて、娘に中華料理店の名刺を見せると、「この人、給付金で12,000円をもらって、お母さんにご馳走していたら、何してるのか分からないよね・・・」と言われました。まあ、日本に暮らす中国の方ですから、社交辞令として受け取っておきましょう。でも、自分の中国語が少しでも役に立てて、ちょっとうれしい今日この頃です。

2009年5月20日


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