MAO的小屋 ~相原茂の隠れ部屋~
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MAO'S Profile
雑誌、新聞、書籍などに寄稿したエッセイ集。
カンニングは先生のため!?

岸弘子
一度、あるクラスの学生全員に試験をボイコットされたことがあります。厳しい指導で有名な日本人のT先生のクラスでしたが、期末試験の当日、時間になったので教室に行ったところ、誰も出席していなかったとのこと。もちろん、事前に欠席の連絡もなく、心配したT先生は一人一人の学生の携帯に連絡を入れることにしました。学生たちは「いい点数を取る自信がなかったので休みました。すみません。」と悪びれる様子もなく答えたそうです。全員に連絡が終わったところで、クラスの中心となる学生が皆に連絡を回し、申し合わせての欠席ということが判明しました。T先生は怒り心頭に達し、出張中だった私のところに厳しい処分を求める相談が入りました。

そのクラスの学生は、全員が日本企業から就職内定をもらっていて、実は、学生たちのモチベーションを上げるため、「今回のテスト結果を企業側に伝えるので、頑張るように!」と通達していました。そのことが学生たちのプレッシャーとなってしまったようです。日本なら、試験には何があってもまず出席することが常識でしょう。しかしながら、中国では悪い結果を出すぐらいなら、欠席した方がましだと考えてしまうようです。試験を欠席したことで、後にどのような結果になるのかまで考えず、とりあえず目の前の困難から逃げることが最優先されます。

結果として、企業側に「試験をボイコットした」ことを報告し、全員が内定取り消しとなりました。翌日、クラス全員が職員室に呼び出されること になりましたが、誰も事の重大さに気付かず、ワイワイといつものように冗談を言ってふざけ合っていました。T先生が入室し、「全員、内定取り消し」という決定を聞いてはじめて泣き出す始末。可哀想には思いましたが、日本の社会人としての常識を知らないまま日本企業に就職しても、必ず職場でトラブルを引き起こすに違いありません。学校に残ってもっとしっかり勉強してもらうこととなりました。

「よい結果を出す」ことが一番大切なこと。「悪い結果を出す」「恥をかく」ことは何としても避けたいというのが中国での常識のようです。

試験の際、どんなに注意していても必ずカンニングが発生します。中には、試験官の先生の注意を無視してまでカンニングを続行する生徒がいるほど。悪いことをしているという意識がないようです。宿題に出したプリントにしても、全く同じ答えのものが数枚提出されることは日常茶飯事です。実習生として来ている学生に理由を聞くと、「学生なら、誰でも、いい成績を取って先生によく思われたいでしょう。」と教えてくれました。

「Aさん、3番の答えを読んで」と指名すると、平気で私の目の前で隣の席のBさんのプリントを借りて読んだりするので、「Bさんの答えを発表して、Aさん自身の勉強になりますか?」と注意します。また、作文を書くよう宿題を出すと、必ず「先生、どのような内容を書けばいいのですか」「文法に重点を置いて評価されますか?それとも、内容に重点を置いて評価されますか」と質問してきます。そんなときは「評価のために作文を書くのではなく、皆さんが伝えたいことを素直に文章にしてほしい」と話します。

テスト前には、「テストの目的は、いい点数を取ることではなく、自分が分からないところを知るためであり、また、先生が自分の学生たちの弱点を知り、今後の指導に生かすためだ」と何度も何度も 説明を繰り返しました。そんな私に中国人スタッフは、「先生、学生に理論的に話して理解してもらうのは無理です。不正行為をなくすためには、やはり厳しく罰するしかないと思います」。ああ、やっぱり中国で一番効果的なのは賞罰制度ね・・・・。

そう言えば、中国映画で0点を取ってしまった男の子が、0の前に自分で10を書き足して100点にしていたシーンがありました。職場に息子の100点の答案を持って行って自慢する父親でしたが、上司に「これは0点だ。前の10と筆跡が明らかに違うじゃないか!」とばれてしまう。カンカンになって怒る父親に「お父さんに喜んでほしかったんだ!!」と涙ながらに叫ぶ息子。「なんてお父さん思いの息子なんだ!」と共感し、感動するのが中国流で、「なんてバカな事をしたんだ。父親は不正行為はしてはいけないとしっかり教育すべきだ!」と考えるのが日本流なんでしょうか。
(2009年6月14日)


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