農村での休日
岸弘子 今回の授業は月曜日から土曜日の週6日制なので、日曜日が唯一のお休みです。特に予定がないと話すと、大家さんが桃狩りに行こうと誘ってくれました。日本でも、夏の観光目玉である「桃食べ放題」「ぶどう食べ放題」の類(たぐい)だろう、と思って同行することにしました。
日が出て熱くなる前にと、7時にうちを出発。直行すると思いきや、途中で知り合いの車を待つために時間待ち。合流したご夫婦の車に誘導してもらって、着いた先がその奥様の実家、桃栽培をしている農家のおうちでした。見渡す限り桃園が続く中に、数件の昔ながらの白壁の家。それぞれの家の前には、柵をめぐらせて、 鶏やアヒルを放し飼いにしてあります。品落ちしたであろう桃をもらって、ついばんでいるところが、さすが桃農家、といった感じです。
よく人間関係を把握できないまま「ニーハオ!」と挨拶を交わすと、広い客間に通されました。取れたての桃を、勧められるがままにいただくと、なんと、日本の水蜜桃も顔負けのおいしさ。一口ごとに果汁が滴り落ちるほど水分が多く、甘さも十分です。何でも、「陽山の桃」といえば、最高級のブランドらしく、なかなか 一般庶民の口には入らないそうです。
一服して、さあ、桃狩りに・・・・。かごを抱えて桃畑の中をうろうろ。一つ一つの果実が新聞紙で大切にくるまれています。そっと新聞をめくって、色を確認し、ほのかなピンクに色づいていれば大丈夫,そっと手でもいでいきます。最初はものめずらしさにキャーキャーはしゃいでいましたが、30分もすると飽きてきて、 大家さんは桃園の中央にある池で釣りを始めてしまいました。私も近くに椅子を用意してもらって、太公望を見学することに。以前は、一面が桃畑で、いくつも池があったそうですが、近年は開発が進んで、池を埋め立て、宅地化が進んでいるとか。実にもったいない話だと思いました。
湖面を渡って吹いてくる風は心地よく、さらさらと風に揺れる桃の葉音を聞いていると、幼いころ、母親の実家のある徳島のみかん農園で過ごした夏休みを思い出します。夏の思い出は、やはり街中の喧騒の中になく、静かな田舎の自然の中にこそあるのだとすれば、こういう田舎の風景が消えていくのは惜しいことです。母 親の実家を継いでいる妹にこういう話をすると「お姉さんは、たまにやってきて、田舎はいいなあ・・・というけど、それは都会の人の言い分。住んでいる者にとっては大変なのよ!!」と反撃されてしまいます。車で1時間走らなければ、スーパーも病院もないとなれば、納得です。
お昼近く、「ご飯を食べていきなさいよ」と声を掛けられ、食卓に着くと、出るわ出るわ。肉にえびに野菜にと、皿数は、実に11皿。大家さんが吊り上げた大きな鯉も早速登場です。何でも、お正月にしか食べられない貴重な魚らしく、大家さんは実に満足げでした。「どれもここれも、自分のうちで取れたものばかりです」 と言われ、あら、この鶏は、午前中まで囲いの中を走り回っていた鶏じゃないかしら、と自然に視線が屋外の囲いのほうに・・・・。めいめいの小皿はなく、大皿から直接口に運び、骨や殻はテーブルの上にペッ!とやるのが中国式の食べ方。
最後まで、テーブルを囲んでいた人たちの人間関係はわからないままでしたが、中国ではよくあること。「友達の友達はみな友達」ということで・・・、ほんのり日焼けした顔で家路に着きました。
2009年7月12日
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